2017年1月16日月曜日

第12 チョコラーデの製法と衛生的検査

長崎 森川釖三郎
薬誌292号632頁(1906)より

 チョコレートが日本へ入ったのは1715年、オランダ語でショコラート、明治期にはドイツ語でショコラーデと呼ばれたと言われるが薬学雑誌にはチョコラーデである。1878年(明治11年)貯古齢糖の名で風月堂から発売されたが、「牛の血が混ざっている」と噂するひともいた。

 日本におけるチョコレートの一貫生産は大正時代(1918)、明治ではなく森永製菓に始まる.従って110年前はまだ本物のチョコを知らぬ者が圧倒的に多かった。偽物も多かったらしい.当時チョコには多くの種類があってバニラチョコ以外は国名を冠した名前で区別していた.それらの製法もこの記事の前半で説明している.

 「仏国チョコラーデ:華尼拉(バニラ)豆2個を砂糖と共に粉末となしたるもの及び善良砂糖1ポンドを柯々阿豆3ポンドに混和す」.また,西班牙(スペイン)チョコラーデは,甲乙2種類あって甲にはカカオ砂糖バニラの他に丁香,桂皮が,乙は甘扁桃が入っていた.華尼拉チョコラーデ(甲,乙)の乙には麝香も入っている.英国チョコラーデはカカオ脂が少ない.

 検査法はまず顕微鏡観察「エーテルを以って脂肪分を除去し,次に温水を以って糖分を溶解し去り残渣を久しく水中に振蕩し濾紙上に集めて澱粉混入等を検査すべし」.化学的検査は,1水分2脂肪3澱粉4糖分5繊維の重量比の求め方,6含窒素物としてテオブロミンとカフェインの定量法,7酒石酸定量,8偽物について書いてある.

 偽物は (脱脂した)カカオ殻,澱粉,穀紛,卵黄,ごまの他,カカオ脂の不足を補うため,牛脂,ヤシ油,扁豆油などを入れている.さらに白亜CaCO3,石膏CaSO4,朱砂HgS,鉛丹Pb3O4なども使う。とにかく板状,赤茶色,甘くて口中に溶ける物さえ作れば、それだけで十分ハイカラな西洋菓子だったに違いない.

 「有害なる銅を検出する簡単なる法は,チョコラーデ粉末に塩酸を加えて酸性となし之に研磨せる小刀を挿入し置くときは光輝ある銅を鍍金す」

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