2017年1月8日日曜日

第4 各種ジアスターゼ製品の比較分析

薬学雑誌278号285頁(1905)
明治38年「ヂアスターゼに就て」というタイトルの論文筆者は名古屋好生館・横井鉉太郎。

ジアスターゼは単なる消化酵素だが、当時は胃が痛ければとりあえず飲む万能薬だった。胃潰瘍であっても胃カメラがないから姿は見えず、H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬など思いつくはずもない。胃が痛いとき消化を助けるとすれば体に良いだろうと思うのは自然である。

さて著者は
「近頃新薬の続出、その数枚挙にいとまあらず。なかんずくヂアスターゼは彼の高峰博士発見以来、非常の勢力を以って我国のみならず欧米各国医家の歓迎する所となり、同剤の勃興、雨後の筍の如し。玉石混同、選択に迷うもの少なからず・・・」
の出だしで、各種市販品を分析、結果報告した。

試験に供したるは、
ヂアエンチモース(大阪・甲辰商会)、
糖化素(大阪・養春館)、
マルツヂアスターゼ(東京.松本商店)、
犬日ギアスターゼ(大阪.犬日出商会)
など10種類。
試験方法は乾燥澱粉に9倍量の水を加え均等糊液とし、商品を加え、終始37-40度の温を保たしめ絶えず攪拌、全く水様液となり沃度溶液に澱粉反応を呈せざるに至りし時間を計る。

最も優等なるは、米国パークデビス社「タカジアスターゼ」9分、以下、山口柏木商店「柏木ヂアスターゼ」10分、フランス局方「ヂアスターゼ」17分と続く。残りは国産品だが2品目は1時間40分もかかった。これをみれば明治以来の舶来物信仰は納得行く。

続いて、胃液を想定して塩酸酸性中での試験、乳酸混合中での試験(当時、胃液に乳酸が存在するという説あり)、医者の処方を想定した重曹添加した試験も行なった。さらに、塩鯖、塩鮭、醤油、赤味噌の食塩含有量を調べ、実際の食事を想定した食塩添加でのジアスターゼ活性も試験している。どの試験においても各商品の順位は同じであった。

なお、高峰譲吉は、全世界での製造販売権をパークデーヴィス社に与えたが、日本だけは日本人に売らせることを彼らに認めさせ、輸入販売する三共商店が1899設立された。

ついでにいうと、パークデーヴィスは、タカジアスターゼの他にこれも高峰によって世界で初めて単離されたアドレナリンを喘息薬として製造販売し、世界最大の製薬会社となった。しかし1970年Warner-Lambardに買収され、ここも2000年にPfizerに買収された。

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