2017年1月28日土曜日

文京区保護樹木・サクラの剪定



2011年夏、初めて見たとき、あまりの大きさに驚いた。
何としても欲しくなった。
当時のGoogle航空写真がある。
自分の家の二階屋根を覆い、道を越えてご近所3軒にまで枝を伸ばしていた。

2011年秋、手付金を払うと、一人暮らしだった前の持ち主が売却を機に近所迷惑だったということで強剪定した。
2013年3月、依然として大きすぎるということで、私のものになってから初めての剪定。このときの見積もりでは80万円と出してきた業者があった。道が狭くて高所作業用の車が入らないから、足場を組んで4人でやるというのだ。しかし別の業者は28万でいいという。一度に切ると枯れるかもしれないから、少しずつ切るということだった。で、そこに頼んだ。

以来、毎年少しずつ低くしてもらっている。
落ち葉掃きも最初は夫婦二人で40分かかったが、今は妻が一人で30分。大樹の迫力はなくなったけれど近所迷惑を考えると仕方がない。

区の保護樹木なので剪定に助成金が出る。
半額支給だが上限があって、最初の年は28万かかったうち、限度額いっぱい6万円出た。しかし直径70センチ以上なら限度額は9万円ではないか、と申し出たら区から測定に来た。地上1メートルの高さで周囲が3メートルを優に超え、次の年から文句なしに限度額9万になった。ところが2014年は25万かかったのに予算がないということで1円ももらえず、我が家にとってはずいぶん金のかかるお荷物となった。

今年は2011年から数えると桜にとって6回目。見積もり14万円と言われたが、あまり切り詰めると葉が減りすぎて樹勢が弱りそうで心配になり、作業を小さくして11万円に負けてもらった。
この日は仕事を休んで1日付き合った。(要するに見物)
これだけ太くなると切り落とすことは危険なため、チェーンソーで切る人と、切り離される部分を持っている人、二人で上から少しずつ輪切りにして短くしていく。
たしかに足場を組めば楽だが、そんな予算はない。彼らはもっと高かったころは木に登っていたが、このくらい低くなると長い梯子でなんとか届く。


感心するのは、彼らは必ず梯子を木に縛りつけてから作業することだ。安全のためには決して手を抜かない。そしてかなり頭を使う。梯子をかけるにしても、作業しやすさと、寄りかかる枝の選択のために、上を見てずっと考えている。

梯子の上でもすごい。両手を使わねばならないから、両足を使って体勢を維持、体の位置を変えるときは、バランス感覚と柔軟性がないとだめだ。もちろん高所を怖がっては話にならない。正月の出初式の演技など彼らにとっては簡単すぎるのではないか。

こんなに短く切っても下に落とすと地響きする。1つ1つやっと運び出せる重さが、この大きさなのだ。
丸太は最初の頃、庭の椅子にしたり、敷石代わりに埋めてみたが、虫がわいたり、アリの巣になったりして、家に置くのは止めた。

休憩時、植木屋さんという職業について話を聞いた。
Tさんは造園会社にいたらしい。給料は安定するが、街路樹や公園とか公共の仕事は単純作業で、このまま一生やるのかと思ったら嫌になったという。それで独立。雨の日や風の強い日はできないし、収入は不安定になるが、一本一本毎年様子を見ながら手入れしていくほうが楽しいという。Fさんも独立しているが、仲間内で仕事を紹介しあったり、手伝ったり、ときには大使館などもいくらしい。皇居は奉仕団の人たちが切るという。

いずれにしろ、植木屋というのは将来なくなる職業らしい。
確かに木のある大きな家は代が変わると遺産相続で売りに出され、数軒に分割されて木どころか庭のない家ばかりになる。私の前の家(さいたま市)も松と桜があったが、業者に買いたたかれ、売った翌月には樹木をすべて切られ、分割されて二軒の建売住宅となった。

そのときの不動産業者の言葉
「今は住宅購入年齢が低くなっています。つまり年収が低い。広いと売れないんですよ。どうしても高くなる。それだけのお金を出すなら、狭くてももっと便利な所に買いますよ。今の人は松やサクラに興味ありません。それより駐車場です」。

正月、よく手入れされた松の見える門には日の丸が似合う。古くともそうした家は美しい。
貧乏しても、庭の植木のお金だけは工面しようと思う。


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