2017年4月17日月曜日

燕尾服のハセベで考えた

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2か月前のシニアの競技会で燕尾服右胸のボタンが1つ取れた。
取れた後も踊った。
飾りボタンだが誰にも気づかれず、別に不都合はなかったので、来週、久しぶりのスタンダード競技会もそのまま行こうとしたが、さすがに不真面目か。
ボタンがどこかで売っていたら妻に付けてもらおうか。


燕尾服は昔、秋葉原のカインズウェアで作った。
そこに持っていけばボタンがあるかもしれない。
ついでにカマーバンド越しにズボンのボタンにつなげる内側のゴムひもが伸びきってしまっているので、これも取り替えてもらうか。

競技を始めて13年。
たった一つの燕尾服はずいぶんくたびれている。
パートナーにもそろそろ買ったら、と言われたことがある。


カインズウェアの場所を確認するのに検索し、ついでにほかの店も見たら、ハセベというメーカーの住所にびっくり。千駄木4-22-3 って、最寄駅に向かう途中、家から坂を下りたところではないか。

有名プロ選手を始め、多くの人がここで作るらしい。
敷居が高そうな気がした。
ボタンだけ売ってもらうことなどできるだろうか。
でも駅に向かう途中なので、ダメならそのまま電車に乗って秋葉原に行けばいいと思い、不忍通り、看板の出ていないハセベビルに入った。各階にアトリエ、スタジオもあるようだ。


4階まで上がってご主人に事情を説明、お見せすると、
「ああ、古い形ですね。このボタンはないです。うちのはコンタクトしやすいように頭をつぶしてあるんです。つけかえなら10分でできますよ」というのでお願いした。
ついでにゴムひもの交換も。
値段は聞かなかった。


彼が服を下の階に持って行った後、彼の母親くらいの女性(従業員?)と世間話をした。
私が4年前に埼玉からすぐ近くに引っ越してきたことから話し始め、貼ってあったお札が天祖神社で、我が家と同じ氏神であることや(動坂町)、彼女のお住まいの駒込神明町に40年前に私も住んでいたことなどおしゃべりしていたらご主人が戻って来られた。
従業員に作業させているらしい。

出来上がるまで燕尾服について、説教とまではいかないが、アドバイスされた。

私の燕尾は全くダメだという。
テールの長さからして古臭い、ラインがきれいにならないという。
ハセベの燕尾服は生地がのびる。袖は短く、シャツに固定して引っ張ることでしわが寄らないようにする。軽い。シャツはメッシュ、新しいシャツは窮屈さを少しでも減らすため袖がないという。確かに踊りやすくなるよう、美しくなるよう、様々な工夫を重ねている。
カインズウェアはもともと紳士服メーカーで、肩パットを抜いただけで、うちほど徹底してスポーツウェアにしていないというのだ。ハセベは創業50年、ダンス燕尾服で48年という。


競技会やっているなら、勝たなければ意味がない。勝つためには燕尾服だという。
悪いがあなたの服ではチェックが入らない、と言われた。ハセベはダンス燕尾服のシェア8割、他が15万でうちが30万でも皆買う。お金のない学生でも、関西から夜行バスに乗ってきても、最高の燕尾服を買う。悪い燕尾服ではいくらレッスンしても無駄です、と。

作業台の端に置いてあったダンスビューをめくって、ビクター・フォンもうちの燕尾です、このセグエの大会はほとんどうちです。この選手権は準決勝12人のうち8人がうちです、と説明してくれる。女性はドレスを変えるけど、男性は服装に無頓着すぎる、何のために競技会に出るのか?


私はまったく反論できず、どんどん小さくならざるを得なかった。

確かにその通り、あまりにも技術的に未熟だから、レッスン、練習は真面目にしているけど、服装の方が大事かもしれない。私は普段から着るものに無頓着だけど、ダンスばかりは考え方を変えねばならないかも。


今まで何人もの先生に習ったが、皆、身だしなみに気を配っていらした。
服装、髪型、男でも化粧は念入りに。
「踊り以外であっても、やれることは全てやらなければいけません」とある先生は言った。上に行く人は皆そうである。


プロならばそうかもしれない。

しかし最高の燕尾で、今まで28点満点中13得点のものが4点上がって17点になったとしても、そのあとどうなるのだろう? 
もう燕尾で得点を伸ばすことはできない。
やはりレッスンと練習しかないのではないか?

私には今でも迷いがある。
時間もお金も、こんなにダンスにかけてもいいのだろうか?
ダンスをしていると他のことが全くできないし、こんなにやっても競技会で勝てない。そろそろやめて、絵をかいたり楽器を弾いたり、のんびり楽しんだ方がいいのではないか?


しかし少なくとも現在は、競技でいい成績をとるためにレッスンを受け練習をしているのも事実である。いい成績をとるためには燕尾だとしたら、レッスンと燕尾を同列に考えるのも間違いではない。やはり作るべきだろうか。


そんなことを考えていると出来上がってきた。
おそるおそる聞いたら2000円でいいという。
ほっとした。
しかし、これからのダンスへの取り組み方を考えさせる日であった。


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